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スイスに学ぶイノベーション

当社は10月、スイス支社を開設しました。これで一層タイムリーに欧州エリアのビジネストレンド、スタートアップのエコシステム(生態系)などの現況を日本に伝えられるようになりました。

スイスはグローバルイノベーション指数(GII)で11年連続の首位(日本は13位)を獲得し、いわばイノベーションの土壌として世界屈指のエリアといえます。また1人当たり国内総生産(GDP)も世界2位と高い経済競争力を持つ国です。 


今回はスイスを訪問し、エコシステムを運営する独立行政法人の所属組織「ルツェルンビジネス」のプロモーションおよび投資部門のリーダー、マティアス・リッシャー氏にインタビューした内容からイノベーションを支える根幹を紹介します。 

リッシャー氏は専門学校で機械工学を学んで機械メーカーに就職した後、英語を学ぶべく渡米し、台湾でのビジネスを経て別の機械メーカーでマネジャーとしてキャリアを積みました。様々な転身を支えたのが、スイス政府が支援する「職業教育」や「継続教育」でした。 


スイスでは経験を積んだ職人や中高年者が経済的に不利な状況に陥らないよう、身につけた知識や技能の維持・向上、経済環境の変化に対応した新しい知識や技能を習得するための継続教育が不可欠と考えており、民間企業も従業員への学習サポートに積極的です。リッシャー氏もこうしたサポートを得てマネジメントとブランドマーケティングを学びながら仕事をこなし、キャリアアップを実現しました。 


ここでいう教育とは完全に今のビジネストレンドに即したものです。企業からすると、ハイキャリアの人材採用にかかる時間とコストを考えれば、社内人材を学び直しで活性化した方が早いと考えます。企業が将来的に求めるスキルや知識について、大学側も素早くキャッチアップし、教育プログラムを強化します。

現在、リッシャー氏のチームは地元企業やスタートアップの課題と状況を深くヒアリングし、キャッチアップするのがミッションです。目的は地域コミュニティーにおいて様々な意見を巻き込み、サポートしながら参加企業へ付加価値をもたらすことです。そうして初めて行政や他の企業が具体的かつ多面的にサポートできるのです。 

さらにチームはエコシステムのプロモーターとして、世界各地のスタートアップとコミュニケーションをとり、まるで起業家の如くスタートアップが収益を上げるのに必要なサポートを考えて行動します。一定の決定権や予算を持ち、逐一稟議(りんぎ)や上長への打診も不要です。 

日本では行政や大企業がスタートアップとコミュニケーションを取る機会というのは、イベントやセミナーなど既定のツールに限定されがちで、自らの裁量で声をかける機会はまれです。しかしイノベーションを実現するには、サポートする行政や企業が自らの意思で自発的にコミュニティーに足を運び、スタートアップと交流し、何が必要かについて常に関心を持ってアクションに移していく必要があると思います。 

中高年のキャリアを無駄にしない継続的な教育、コミュニティーを重視するエコシステムづくりの姿勢こそ、スイスがGIIトップを11年続けられる根幹となっているのではないでしょうか。 


ウズベキスタン出身。サマルカンド国立外国語大学で英語・日本語言語学を修了。人材開発コンサルのSOPHYS(ソフィス)とグローバル事業開発支援のTrusted(トラスティッド)を東京で設立。




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