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経営判断 長短両面で―協業体制の維持重要に

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、私と交流のあるスタートアップの業務提携や投資の案件が、合意目前で次々と延期または取り消されています。先行きの不確実性が増し、ハイリスクの投資を掲げるベンチャーキャピタルでさえ出資をためらうような環境下で、企業が支出を抑えて状況の好転を待つ姿勢をとるのはやむを得ません。


とはいえ現場がプロジェクトを停止するか否かで意思決定する際に、長期の経営戦略と短期の利益計画という時間軸の違いが十分に考慮されていないと感じます。

社内人材の育成と研究開発は企業の長期的な成長のために継続すべき投資対象であり、社内外の圧力によって中断させるべきではありません。特に企業間の協業の停止でスタートアップ・エコシステム(生態系)が壊れると、日本でのイノベーション創出の成長エンジンの一つが失われます。


短期志向で自社のリスクヘッジを図るのであれば、同時に規模の大小を問わず、将来に向けてつながりを強化すべき利害関係者との共存にも注意を払うべきです。

経営トップは現場への明確なメッセージによって、大局的な見地から従来どおり推進すべきプロジェクトを選別するための判断基準を伝えることが必要だと考えます。

リスクマネジメントについてこう考えるのは、私の出身とも関係がありそうです。母国のウズベキスタンは、私が小学生のときに旧ソ連の国家連合から独立しました。

当初は政治システムが不安定で経済振興のノウハウも乏しく、国民は政府に期待していませんでした。こうした中で、人々はまず家族が暮らしていくために必要な最低限のことを実行しました。

次に親族や近隣住民、村などのコミュニティの生活を守る方策と、そのために貢献できることを模索しました。このように結束を高めて国家リスクに対応したのです。


現在の日本でも、この考え方を適用できると思います。

自社と取引相手や非公式の所属団体などのグループで知見を共有し、相互支援を行い、徐々にその輪を広げていくことが経済界のリスクマネジメントにつながると考えるからです。

中小企業やスタートアップなどの取引先を含むビジネス上のグループでは、大手企業が最も大きな実務的、精神的な貢献を果たすことになるでしょう。

大手企業を中心に価値のあるメンバー同士の関係を維持し、長期的戦略にもとづいて今までどおりの協業体制の維持に努めることは、グループの信頼を強化し、シナジー(相乗)効果を高めます。そして環境が平静さを取り戻したときに、グループは競合他社に対して優位性を持つのです。


また、このようなリーダーシップを持つ現場の責任者を育成することも、HR(人的資源)部門の使命の1つであると考えます。

先端技術の探究と異業種の融合が日々の人々の暮らしや社会システムを刷新していく環境では、グローバルな利害関係がさらに複雑化します。企業は模範解答のない重要な意思決定を求められる局面が増えるでしょう。


不確実でハイリスクな時代が訪れています。企業が他社に先駆けて優秀な人材や協力会社などのリソースを結集し積極的に事業機会をつかむには、現在の状況をも教材にして求心力と判断力、目利き力をもつ社内人材の育成を継続すべきだと考えます。


ウズベキスタン出身。サマルカンド国立外国語大学で英語・日本語言語学を修了。人材開発コンサルのSOPHYS(ソフィス)とグローバル事業開発支援のTrusted(トラスティッド)を東京で設立。




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