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生産性を上げるには―ヒントは社外にある

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私は今秋、商用で欧州を訪問しました。目的は現在のビジネスパートナーと会ってコミュニケーションを図るとともに、これから日本企業との活発な事業連携が期待される国や地域で、新たなパートナー企業を見つけることでした。


その滞在中、私はイタリア人の仕事の進め方には、日本人よりも高い生産性を持つ側面があることを知って興味深く感じました。訪問した北部のいくつかの中小企業では、日本であれば3人分に当たるタスクをミドル・マネジャー1人に任せていました。


マネジャーは別の部署のタスクにも積極的に関与して、権限と責任を分担しながら残業せずに仕事を完了させます。


経営者たちに話を聞くと、イタリアには日本と比べて次のような特徴があるようです。

・伝統的な職人気質と長年の税制優遇政策により、家族経営の小企業が多数存続している

・産業別の労働組合の影響力が強く、正規雇用者の権利に対する法制度の手厚い保護がある

・ワークライフバランスに対する意識が高い


こうした背景から、イタリアの中小企業は正社員の雇用には消極的で、少数精鋭による生き残りを図るようになりました。雇用される側も残業せずに作業を完了させることに努めてきた結果、合理的な仕事の進め方が定着したのです。


生産性の追求が雇用促進を妨げている側面もありますが、EU(欧州連合)経済の劣等生として語られることの多いイタリアが、私に多くの気づきを与えてくれました。


一方、日本の大手IT(情報技術)企業に勤めていた私の知人の数年前のエピソードを紹介します。彼はあるサービスに関する海外ユーザー向けのヘルプデスクを担当していました。


業務の大半はユーザーからの問い合わせメールに対して、定型的な回答をコピー&ペーストして返信する単調なもの。職場のメンバー数十人には毎日、作業を通じて感動したことや自身を成長させたことを手書きするリポートの提出が義務付けられていました。


それを煩わしく感じた彼はいつも同じことを書いて済ませていたところ、やがて管理チームから注意を受けました。彼はそれを聞きながら、儀式のような提出作業はもちろん、手書きの用紙を常にチェックし、保管する部署があるという無駄に驚いたと言います。


日本企業は間接部門にタスクを割り当てる場合、私が訪問した欧州企業に比べて、主要な意思決定の権限を彼らに与えていません。半面、作業のプロセスに関しては属人的なやり方を認める傾向があり、その集積が部署レベルの生産性を阻害していると感じました。


自身の職場で長年にわたって醸成されてきた価値観やプロセスこそが最善だと考え、他者から提案された新たな方法に抵抗感を覚えたり、無関心を装ったりすることは珍しくありません。ですが、自社に適した生産性向上の取り組みについて大きな気づきを得るためには、「社外の知見」を広めることが大切です。


先のイタリアの中小企業の例や、厳しい経営リソースで生き残りを図っている国内の新興企業のように、自社とは大きく異なる規模や環境の会社の事例からも多くのヒントを得られます。


定型業務の中でも効果が怪しいものは廃止し、その時間を外部の人も交えたコミュニケーションに充てる方が、生産性の向上に役立つはずです。


ウズベキスタン出身。サマルカンド国立外国語大学で英語・日本語言語学を修了。人材開発コンサルのSOPHYS(ソフィス)とグローバル事業開発支援のTrusted(トラスティッド)を東京で設立。




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